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学びの根源にある「音楽の喜び」を実感したイベント

国立音楽大学の創立100周年記念行事「くにおん100フェス!」

ピアノや音楽に携わる人の間で、「憧れの大学」として、また自分自身が学んだ「懐かしの母校」として語られることも多い国立音楽大学。「くにおん」の愛称で知られる同学は、1926年に「東京高等音楽学院」という名で東京・国立の地に創立しました。つまり今年、2026年は100周年のメモリアルイヤー! 6月26~28日、創立100周年記念行事「くにおん100フェス!」が開催されました。当日の模様をレポートします。

文-小島綾野
写真提供-
国立音楽大学

6月27日の「みんなでお祝いしよう、くにおん100周年!」より。日本のリトミック教育・研究をリードする「くにおん」ならではの「リトミックコーナー」も。電子オルガンの即興演奏に合わせ、子どもたちは音楽にのって歩いたり、音楽が止まったらピタッと固まったり……「音楽に合わせて体を動かす」楽しさをたっぷり味わった

3日にわたるプログラムは「音楽を愛するすべての方々へ贈る祝祭」というフレーズのとおり、バラエティに富んだラインナップ。奇しくも台風7号・8号がダブルで直撃した週末と重なってしまいましたが、3日間とも悪天候をものともしない大盛況となりました。

DAY1である6月26日はサントリーホールにて、クラシック音楽を中心とした演奏会を2本立てで開催。昼のコンサート「Ensemble of Memories」のコンセプトは「音がつなぐ、くにおん100年の記憶」。先述の「東京高等音楽学院」校舎落成記念演奏会や、創立50周年記念演奏会などのプログラムを再現する中で、100年の歴史を振り返りました。
夜のコンサート「Grand Gala」では、「くにおん」から羽ばたいた国内外のトッププレイヤーたちが集結して夢のオーケストラを結成! さらに、卒業生である久石譲が本コンサートのために書き下ろした《The East Land Overture》が世界初演されました。

「Grand Gala」では、「くにおん」の在校生たちも、伝統の吹奏楽団「ブラスオルケスター」として、同じ舞台で競演
                      

DAY2(27日)は会場を本学キャンパスに移し、学生が企画・運営するワークショップやコンサートなどを開催(後述)。そして最終日の28日、DAY3は「Circle of Music」というタイトルでポップスや映画音楽、ジャズのコンサートを。総合演出には武部聡志(卒業生)、楽曲提供には小曽根真(招聘教授)、出演者には山下洋輔(同)、広瀬香美(卒業生)、秋川雅史(同)らのレジェンドから、ハラミちゃん(同)ら現在のスターまで、卒業生や本学で教鞭をとるミュージシャンが勢揃い。「え、この人もあの人も『くにおん』なんだ!」と、“くにおんファミリー”の層の厚さにも改めて驚かされました。

DAY3「Circle of Music」の会場となった「立川ステージガーデン」は、「くにおん」のある立川市に最近誕生した街「Green Springs」の一角。「くにおん」でも地域貢献の一環として学生たちがしばしばコンサートを行っている縁深い地だ

さて、本稿ではDAY2「Campus Harmony」を取材。先述のとおり、学生たちが各々の専攻を生かした企画を展開しました。たとえば音楽療法専修の学生は「感じてつながる♪音楽のちから体験ルーム」という参加型のワークショップを。幼児音楽教育専攻では笹を飾りながら子どもたちと音楽を楽しむ恒例の七夕祭を「100フェス」特別バージョンで……演奏に限らず教育・研究・音楽療法まで、様々な形で音楽で社会に寄与していく人材を育ててきた「くにおん」。その多彩な専門性や、100年の歴史が積み重なってきた上での「過去・現在・未来」を実感できる1日となりました。

くにおんが誇る楽器学資料館(楽器博物館)では、100周年記念に制作したフォルテピアノを用いたコンサート「モーツァルト時代のフォルテピアノ」を開催。18世紀ウィーンの鍵盤楽器製作家、アントン・ワルターのピアノをモデルにし、本学で複製した楽器……通称「くにおんフォルテピアノ」の音色を間近で聴くことができます。演奏するのは鍵盤楽器専修の学生たち。聴き慣れた「月光ソナタ」(ベートーヴェン)などを弾いてくれましたが、その音色は現代のピアノのきらびやかな響きとはだいぶ異なる奥ゆかしい音……ベートーヴェンは当時この音を聴き、この音を思い描きながら作曲をしていたのですね。「作曲家の生きた時代の楽器に触れることで、作品の解釈・演奏研究に役立てます」という学芸員さんの言葉の意味も、いっそう深く理解できます。

100周年を記念して製作された「くにおんフォルテピアノ」。キャンパスに立っていたシンボルツリー(校舎「新1号館」建設に伴い伐採)を材料の一部に利用している                  

そうして「18世紀の音が現代に蘇る」という体験をした後は、音楽データサイエンス・コースのワークショップ「くにおん生が驚くほど上手にピアノを演奏しよう」へ。先ほどと打って変わって現代の最新技術を用いた、演奏研究の最先端を体感できる場です。来場者がピアノで「ドレミファソラシド」と音階を弾くと、鍵盤の真上に取り付けられたカメラが手の動きを画像解析し、演奏を「くにおん入学前レベル」「副科レベル」「ピアノ科レベル」の3段階で判定。「このシステムの目的は、体に無理な負担のかからない演奏や練習の方法を科学的に開発すること。プログラムも学生たち自身で組んでいます」と、ワークショップを運営する4年生の松家詩英さん。小学生からシニアまでたくさんの来場者が訪れ、次々にピアノを弾いてはレベル判定のドキドキに歓声が上がります。そして「今は音大でこういう研究もしているんだ!」という感心の声も。音楽の未来を科学の力で切り拓いていくことにも、「くにおん」は挑んでいるのですね。

「くにおん生が驚くほど上手にピアノを演奏しよう」では、3段階のレベル判定の他、「手の力をもっと抜いてみましょう」などのアドバイスも表示され、今後の練習に役立てられる

小ホールで行われた子ども向けのコンサート「みんなでお祝いしよう、くにおん100周年!」では、くにおん卒の「うたのおにいさん」、横山だいすけにちなんで《ぼよよん行進曲》や《ありがとうの花》などを音楽教育専修の学生たちが笑顔で歌い踊り、客席の子どもたちは大喜び! また、合唱曲の名手として知られる作曲家・合唱指揮者の山崎朋子(卒業生、本学附属中学校・高校講師)がゲストとして登場し、代表曲《大切なもの》などを指揮しました。

「みんなでお祝いしよう、くにおん100周年!」にゲスト出演した山崎朋子氏(右)。「どうしたら歌がうまくなりますか?」という会場の子どもたちからの質問に「歌がうまくなるには、まず歌を好きになること!」

DAY2のしめくくりは講堂大ホールでのコンサート。作曲専修の学生が手がけた100周年のファンファーレから始まり、弦管打楽器専修の学生たちによる吹奏楽にオーケストラ、ジャズ専修の学生たちのライブと、実に幅広い音楽の世界が学生たちによって展開されました。フィナーレは声楽専修やミュージカル・コースの学生たち、また当日のワークショップに参加した中学生から大人たちも参加しての《民衆の歌》。ミュージカル『レ・ミゼラブル』の感動的なシーンを模した合唱が壮大なオーケストラとともに繰り広げられ、会場は音楽を奏で、味わう喜びでいっぱいに……大学で音楽を学び、音楽の専門家を志すにあたっても、常にその根源にあるのは「音楽の喜び」なのだということを、会場に満ちる音楽の響きとあふれんばかりの歓声から改めて実感しました!


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