文 山本美芽
コンポーザー・ピアニストとして独自の境地を切り開く斎藤守也さんのトーク&ライブ「曲が生まれる瞬間とは in 名古屋」が 9月19日、名古屋のライブハウスMonaPETROにおいて開催されました。トークゲストをつとめた筆者が質問を重ねながら作曲の秘密に迫るこのイベントは、2026年4月に横浜でピアノ指導者向けに開催された同企画の名古屋公演。今回は新たな楽曲も加え、一般のファンを対象として開催されました。

日々の生活の中でアイデアが生まれ、曲の形になるまで
まずはプロフィール紹介からスタート。7人きょうだいの斎藤家での子ども時代、ピアノを習うよりも先に小学生から作曲を始めたことや、ルクセンブルク留学中・帰国後のエピソードが演奏を交えて詳しく語られました。
続いて、「いつかの空」「IN THE RAIN」「LITTLE LIFE ~小さき花の詩」のオリジナル3曲について、演奏をしてから、どんな場面で着想を得たのか、どの部分が最初にできたのかといった「曲が生まれる瞬間」が明かされました。曲を構成している個々のパーツが尊く思えたり、作曲当時の心情と自分の経験がオーバーラップしてきたり。目の前でピアノを奏でながら語る守也さんの言葉からは、日々の生活の中でアイデアが生まれ、曲の形になる一連の過程がはっきりと見えました。
コードネームや、カデンツ、転調、和声進行といった音楽理論の話もあえて避けずに、音楽家としての思考を開示。和声進行については、20世紀にジャズが進化した際の考え方と共通する要素もはっきりと見られ、21世紀の作曲家ならではの一面が浮き彫りに。なによりも自由な創造性を大切にしている姿勢が印象に残りました。
11月に初の著書『音楽をするということ』が刊行
当日は、11月5日に発売を控える守也さんの初の著書『音楽をするということ』の予約開始日でもあり、本の内容についても少し触れられました。
守也さんの子ども時代のエピソードから、留学を経てオリジナル曲でプロ・デビューし「レ・フレール」として作曲と演奏に明け暮れ、ソロ活動開始以降ライフワークとして続けている、病気や障害がある子どもたちに音楽を届ける活動まで。ひとりのアーティストの深い思想や感性に触れられる一冊として、会場の期待も高まりました。

【11月5日発売】
『音楽をするということ
レ・フレール斎藤守也の音楽教育論』
斎藤守也 著
兄弟による1台4手連弾「レ・フレール」で活躍し、コンポーザー・ピアニストとしてソロでの活躍も目ざましい斎藤守也が綴る完全書き下ろし。12歳でピアノを始め、15歳でルクセンブルクの音楽学校に留学した経緯をはじめ、幼少期から留学時代、帰国後の生活から現在の活動につながる音楽観までを自身の言葉と写真で辿る。ライフワークであるバリアフリーコンサートについても、その背景や思いを掲載。斎藤守也が「音楽をする」ということ、さらには教育についてや自身の経験に基づいた価値観など、独自の目線で語った一冊。
ドラマチックな世界観に引き込まれた夜のソロ・コンサート
この日は「MORIYA DAY in NAGOYA!」として昼夜2公演。夜には同会場で、「秋待ちピアノコンサート in NAGOYA」という斎藤守也さんのソロ・コンサートが行われました。ステージに据えられたヤマハS6の豊かな響きにのせて、憂いのある「MONOLOGUE A」「LONG LONG AGO」でスタート。吉田兄弟とのコラボアルバムに収録された「転々」や、マリンバ奏者の辻寛子さんのために作曲され辻さんのアルバムに収録された「木の音」など深みのある曲が続きます。昼のトークライブでも最後に演奏された、「月の歌」「アンパサージュ〜プレザージュ」では、ドラマチックな世界観に引き込まれました。
終盤は手拍子の入る「NBAYEH」「野暮天ブルース」「RGR」「On y va!」で畳みかけ、会場は一体感あふれる熱気に包まれました。アンコールの「September 」(アース・ウインド&ファイアー)では、切れ味鋭い左手のリズムがドラムのように躍動。残暑から秋へと向かう季節にふさわしい、熱さと味わい深い余韻を残す一夜でした。


