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パスカル・ドゥヴァイヨン&村田理夏子
「2人で1人」究極のピアノデュオが20周年公演

11月29日、王子ホールでブラームス、リスト、プーランクの大曲に挑む

パスカル・ドゥヴァイヨンと村田理夏子、国際的なキャリアを誇る二人によるピアノデュオが、今年で結成20周年を迎えます。そのことを記念したリサイタルが11月29日、東京・銀座の王子ホールで開催(曲目:ブラームス「2台ピアノのためのソナタ」、リスト《悲愴協奏曲》、プーランク「2台のピアノのためのソナタ」)。お二人に、これまでの道のりや大曲が並ぶプログラムについて、またピアノデュオの魅力や聴き手にとっての楽しみ方、さらには学習者が知りたい練習のしかたまで、幅広く伺いました。

ききて・まとめ-編集部

パスカル・ドゥヴァイヨン&村田理夏子
左から)村田理夏子、パスカル・ドゥヴァイヨン

――デュオ結成20周年記念リサイタルとのこと、誠におめでとうございます。これまでの20年を振り返って、デュオとしてどのような変化がありましたか?

ドゥヴァイヨン 2台のピアノを演奏するということは、単に音符を一緒に弾くだけではありません。むしろ、2台のピアノを一緒に体験することこそが大切であり、一緒に練習する時間は何物にも代えがたいものです。ルバートや自由なピアノ演奏を一緒に学ぶことで、時間をかけてしか築けない特別な繋がりが生まれるのです。

村田 友情と同じように、ピアノデュオには時間をかけてしか生まれてこない空間があります。互いを知り、信頼を築く、その過程が何よりも尊いと感じます。20年という月日を経て、私たちの演奏は互いへの信頼と尊重の基盤の上に成り立っていて、だからこそ解き放てる自由な命が生まれるような気がしています。

――大曲3曲が並ぶ充実のプログラムですね! 今回の選曲の意図と、各曲の聴きどころをご紹介ください。とくにブラームスの名作「ピアノ五重奏曲 作品34」のもととなった「2台のピアノのためのソナタ ヘ短調 Op.34b」が注目されますが、2台ピアノで聴く際の注目ポイントや楽しみ方も教えてください。

ドゥヴァイヨン、村田 私たちは意識的に、少し変わった個性的なプログラムを選んできました。東京での初めてのコンサートでは、メシアンの《アーメンの幻影》を演奏しました。その後、リストの《ファウスト交響曲》、そして昨年の結婚20周年記念コンサートでは、ブラームスの《ハイドンの主題による変奏曲》を取り上げました。それなら、同じくブラームスの「ピアノ五重奏曲 Op.34」の2台ピアノ版である「Op.34b」も、プログラミングしよう!と決意したのです。

この2台ピアノ版は、ピアノ五重奏曲を編曲したものだと勘違いされがちですが、実は2台ピアノ版が先に生まれました。実際に演奏してみると、確かに2台のピアノから五重奏の各楽器の音色や声部が驚くほど明瞭に浮かび上がってきます。その豊かなポリフォニーには心を打たれます。私たちの演奏では、とくにこのポリフォニーの豊かさを、できる限り色彩豊かに表現することを大切にしました。2台ピアノから紡がれる声部の重なりや絡みが生み出す心打たれる抒情性を、ぜひお楽しみいただければ幸いです。

リストの《悲愴協奏曲》も、あまり知られていない作品ですが、実に豊かな魅力にあふれています。互いがソリストの要素を持つ「協奏曲」という珍しい作品です。私たちは常に互いの音が1つの作品となる、つまり誰が何を弾いているのかわからないような一体感を持つ音質を目指しています。だからこそ「2台のピアノ」と「1つになった2人のピアニスト」から繰り広げられるピアノスティックなダイナミズムも聴きどころです。

一方、プーランクの「2台のピアノのためのソナタ FP156」からは、叙情性と壮大さを併せ持つ、彼のまた違った一面が見えてきます。高度な技巧と詩情が美しく溶け合っているのも、この作品の魅力です。

村田理夏子

村田理夏子(むらた・りかこ)
東京藝術大学卒業後、DAAD給費留学生としてベルリン芸術大学に留学し、満場一致の最高点首席で卒業。ドイツ国家演奏家資格を取得し、ポルト国際コンクールなどに入賞。ベルリン・フィルハーモニーで30回近く協奏曲を演奏し、2003年から2018年までベルリン芸術大学講師も務めた。ソロCD『エスプリの旅』『水平線への旅』は『レコード芸術』推薦盤、夫パスカル・ドゥヴァイヨンとのデュオCDも『レコード芸術』特選盤に選出。室内楽やマスタークラス、YouTube配信など教育活動にも尽力し、流山の国際室内楽音楽祭では音楽監督を務める 

――15年ぶりとなるデュオのCDをリリースされ、公演当日にお目見えするということですが、どのような思いで録音されたのでしょうか?

ドゥヴァイヨン、村田 今回のメインプログラムとなるブラームスの「2台のピアノのためのソナタ」とじっくり向き合ううちに、私たちはドイツ・ロマン主義の、苦悩に満ちた世界へと引き込まれていきました。演奏するたびに深く心を揺さぶられ、ぜひ録音として残したいと思ったのです。

カップリングするプーランク作品では、プーランクの多彩な顔に出会えます。リサイタルで演奏する壮大かつ抒情的なソナタに対し、初期の作品ではナイーブで率直な、時に子どもじみたプーランクをお楽しみいただけると思います。ぜひ会場でお手に取っていただけましたら嬉しいです。

――ドゥヴァイヨンさんは指導者としても高名ですが、ピアノデュオの指導をされる際に、とくに重視されることは? 

ドゥヴァイヨン もっとも難しいのはおそらく、自由に演奏しながらも二人の息を合わせ、お互いが納得できる演奏の方向性を見つけることです。一方、二人で演奏する大きな利点は、相手のアイデアを取り入れ、それに自分の考えを加えながら、共に音楽を豊かにしていけることです。もちろん2台のピアノを同時に使うことで生まれる、豊かな響きも大きな魅力です。聴いてくださる皆さんには、ただ音楽の美しさに身を委ね、心ゆくまでその世界に浸っていただきたいと思います。

パスカル・ドゥヴァイヨン

パスカル・ドゥヴァイヨン(Pascal DEVOYON)
1978年チャイコフスキー国際コンクールでフランス人で過去最高位の第2位を獲得。カーネギー・ホールやベルリン・フィルハーモニーなど名門ホールで演奏し、N響やロンドン・フィルなど一流楽団とも共演、録音は40を超える。2006年から夫人の村田理夏子とデュオを組み、リリースしたCDは『レコード芸術』特選盤に選ばれた。パリ国立高等音楽院やベルリン芸大などで教授を歴任し、現在は国立音楽大学招聘教授ほか。流山の国際室内楽音楽祭では音楽監督を務める。国際コンクールの審査員も務め、門下から多数の入賞者を輩出。仏政府からシュヴァリエ勲章を受章 

――ピアノデュオに取り組んでいる方々も知りたいと思うのでお尋ねしますが、練習はどのように進められていますか? また、プリモとセコンドは曲によってどのように振り分けるのでしょうか? 

ドゥヴァイヨン、村田 実はとてもシンプルな方法です。まずそれぞれが自分で練習し、自分のパートを弾けるようになったところで、初めて二人で合わせます。そこで、まず相手が作品全体をどのように捉えているのかを理解しようと努め、そのうえで、どのような方向性で曲を作り上げていくのが最善なのかを話し合います。

そして新しく出てきたアイデアについて、それぞれが少し時間をかけて考え、自分なりの表現に取り入れてみます。その後、もう一度合わせます。たいていこの段階になると、最終的に目指す音楽の姿がよりはっきりと見えてきます。もちろん二人で合わせるのがとくに難しい箇所があれば、そこを重点的に練習することもあります。

大切なのは、自分だけが正しい答えを持っていると思い込んで練習に臨まないことです。 新しいアイデアはいつでも音楽を豊かにしてくれるものですから、それを積極的に取り入れていくべきだと思います。

プリモとセコンドのどちらを誰が担当するか、という問題についてですが、2台ピアノのための作品は、どれも一方がソロで、もう一方が伴奏というようには書かれていません。ですからそんなことで無駄に争う必要はありません。お互いに役割を分け合って演奏しています。お客様に変化を楽しんでいただく上でも、1つの演奏会でどちらかだけがプリモにならないようにとも考えています。


*「パスカル・ドゥヴァイヨン&村田理夏子 ピアノデュオ・リサイタル」(デュオ結成20周年記念公演)のチケット予約はこちら。

*新譜情報(2026年10月21日発売)
パスカル・ドゥヴァイヨン&村田理夏子『 2人で紡ぐ3つのソナタ』
レーベル:有)レグルス
収録曲
ブラームス:2台ピアノのためのソナタ 作品34b
プーランク:4手のためのソナタ
プーランク:2台ピアノのためのソナタ

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