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ブルクミュラー『25の練習曲』の弾き方教え方~第17番《おしゃべり娘》

ブルクミュラークリニック ダイジェスト

ブルクミュラークリニック ダイジェスト

ブルクミュラーの大人気ピアノ作品『25の練習曲』から1曲ずつ取り上げ、曲の作り、取り組み方、練習法などをお話ししていく「ブルクミュラークリニック(略してブルクリ)」。月刊誌『ムジカノーヴァ』から引き継いで、この『ムジカノーヴァONLINE』でも続けていきます。今回は第17番《おしゃべり娘》です。ここでは大事なポイントをかいつまんで、ダイジェスト版としてお届けします。第25番まで行き着いたら、「処方箋」などもまとめて隅々までご紹介します。

ブルクミュラークリニック院長 奈良井巳城(ならい みき)

文 奈良井巳城
イラスト 駿高泰子


おしゃべりの呼吸やリズムを出すために

伝説のテクニカルマスター 腕重御 脱蔵(うでおもみ だつぞう

腕重御 (……はて、どうしたものか。院長は留守か。まあよい。何百年も生きておると、こういう日も珍しくはない。むしろ静かでよいかの……いや、この《おしゃべり娘》を語るには、やや静かすぎるかもしれんの。少しばかり、こちらがしゃべりすぎるくらいでちょうどよい曲じゃよな)

腕重御 ほっほっほ、読者諸君。わしの名は腕重御脱蔵うでおもみだつぞうじゃ。ピアノの弾き方、身体の使い方、そして鍵盤の上で音がどのように意味を持ち、どのように人の心を動かすのかを、長い年月をかけて見続けてきた老いぼれじゃ。わしが開院した「チェルニークリニック」に目を通してくれた者もおるじゃろうが、ピアノというものはただ音を並べるだけでは成立せん。身体の使い方はもちろん、楽譜やテクニックの裏にある音楽の意図、その先にある表現、それらがすべて結びついて初めて“音楽”になるのじゃ。若い頃はな、音を揃えることにばかり気を取られるものじゃ。均等に、正確に、乱れなく――それ自体は悪いことではないがの。むしろ必要な段階とも言える。だが、それだけでは音は生きてこない。あるとき、ふと気づくのじゃ。“音は語らせるものだ”と。同じ高さ、同じ長さの音であっても、そこに込める意図や重さが違えば、まるで違う意味を持ち始める。それに気づき、考え始めて、ようやく音楽の入口に立ったと言えるじゃろう。
……おっと、話がそれてしまいそうじゃな。それでは、いつものように、全体を見ていこう。曲の造りを見極めることが先決じゃ。

【イントロ】 1~6小節目

腕重御 この曲は、短いながらもイントロ(1~6小節目)があり、旋律A(7~14小節目)があり、性格の変わる旋律B(15~22小節目)が出てきたあと、再び旋律A(23小節目~31小節目1拍目)に戻り、最後にコーダ(32小節目2拍目~35小節目)で締めくくられるという、割としっかりとした構造を持っておる。

【旋律A】 7~14小節目 / 【旋律B】 15~22小節目
【コーダ】 31小節目2拍目~35小節目

腕重御 こうした構造を感じ取らずに弾いてしまうと、どこを弾いても同じように聞こえてしまうのじゃ。3/8拍子というのも重要でな、1小節を一つのまとまりとして流れを感じることが求められるんじゃぞ。この“まとまり”こそが、そのままおしゃべりの呼吸やリズムにつながっていくんじゃよ。そして《おしゃべり娘》というタイトル。これをどう捉えるかで、演奏の方向が大きく変わることになるんじゃ。「ただ元気にしゃべる子ども」と見るか、「少しばかり口が達者で、気の利いた駆け引きができる娘」と見るか。わしは後者のほうが、この曲の面白さを引き出せると考えておるが、皆はどう感じるかの? 次に調性じゃ。F-durは優しい明るさがあるからな、そこにほんのりと知性やエレガンスが見え隠れするような音が作れると、単なる可愛らしさを超えた表現になるんじゃ。

一つひとつの音型の役割や意味

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