ブルクミュラークリニック ダイジェスト

ブルクミュラーの大人気ピアノ作品『25の練習曲』から1曲ずつ取り上げ、曲の作り、取り組み方、練習法などをお話ししていく「ブルクミュラークリニック(略してブルクリ)」。月刊誌『ムジカノーヴァ』から引き継いで、この『ムジカノーヴァONLINE』でも続けていきます。今回は第15番《バラード》です。ここでは大事なポイントをかいつまんで、ダイジェスト版としてお届けします。第25番まで行き着いたら、「処方箋」などもまとめて隅々までご紹介します。

ブルクミュラークリニック院長 奈良井巳城(ならい みき)
文 奈良井巳城
イラスト 駿高泰子
物語を作り込んで表現するのが醍醐味
奈良井 読者のみなさん、こんにちは。本日は第15番《バラード》を紐解いていきましょう。今日は離鍵科の蓮田益尾先生に来ていただいています。益尾先生、よろしくお願いします。

総合部離鍵科教授 蓮田益尾(れんだ ますお)
蓮田 あ~、今日はよろしく。この曲で僕が呼ばれたのは、あれだろ? 連打だろ? スナップだろ?
奈良井 え、あ、まぁ、そうなんですけど、益尾先生、まずはいつものように7つの心得を順番にお願いします。

蓮田 おぉ、すまんな、せっかちなもんでな。うん。では、まず楽譜についてだ! 楽譜選びは慎重にしなきゃならん、作曲家の意図とは解釈が異なる楽譜がたくさんあるからな……。
奈良井 益尾先生、楽譜選びについても以前に扱っていますので、心得の二、三あたりからお願いします。
蓮田 なんだ、いろいろうるさいな、もう。なになに、心得二か、うむ、拍子は8分の3! 1小節を一つのノリで作る拍子感だ。このせわしなさと勢いがいいよな。調性はなんともドラマ性のあるc-moll。やっぱりバラードはmollだな。うん。
奈良井 バラードと言うと、ショパン、を連想する人も多いですよね。
蓮田 もともと、バラードは詩だったり歌だったりするわけだが、器楽曲に取り入れたのはショパンだと言われているからな。バラードは抒情的で物語性の高い様々な旋律で構成されるドラマチックな曲だ! この第15番も単純ではあるが、なかなかにドラマ性があるしな。フレーズに物語を作り込んで表現していくのが醍醐味だろう。
例えばだな、楽語もいきなりmisteriosoだろ? この怪しげな出だしはな、魔王が棲むという怪しい深い森の中に入り、ドキドキしながら彷徨っているような感じだ。7小節目と9小節目のsfでは得体の知れぬ魔物が木々の陰から出てきてびっくりするとかな……。

蓮田 まぁ、色々自分で作ってくれ。楽語はムジカノーヴァ2025年10月号の付録ポスターも参照してほしいな。
奈良井 なんか続きが聞きたいですね~。でも、そうやって具体的に場面を考えるのが表現への近道ですよね。
蓮田 あ、だけどな、色々と表現を考える前に、手首のスナップの動きができないといかん! 手首だよ手首! 諸君。
奈良井 あ、はい、手首ですね。先生。でもその前に、ちょっと遅くなったけど、ここでいつものように、曲全体を見てみましょう。
とにかくキモは手首の動き
蓮田 ああ、心得の続きね。楽譜にはフレージングもアーティキュレーションも分かりやすく書いてあるよな。場面が作りやすいように短いフレーズが多いし、アクセントも効果的に使われてる。中間部は長いスラーで甘く柔らかいフレーズになってるというのも、にくい作りだよねぇ~。
奈良井 右手が伴奏で始まるのはお初ですね。

蓮田 それだよ、それ。やっと話ができるじゃないか。とにかくこの曲でのキモは手首の動きだよ。キミ。しなやかなスナップの動き。右手の和音には絶対必要だし、曲全体に圧倒的にスタッカートが多いから、手首が柔軟に使えると、場面に合った音色が出せるようになるんだよ。物語を考えたり、フレーズのキャラクターに変化を作ったりすることも大事だけど、とにかく手首を柔軟にしなければならない。
奈良井 とにかく手首ですね、先生。
蓮田 そうよ、手首よ。しなやかなスナップの動きよ。連打やスタッカートに限った話じゃないのよ。よく覚えておきなさい!『手首を制すものは音色を制す』だ! そのためには原点に返るといいよ、うん。
奈良井 原点に返るとは……?
蓮田 原点と言えばハノンだろ、君。まぁ、ハノンの第48番に地道に取り組むんだ! もうこれに尽きる。
奈良井 手首のスナップが大事なのがよく分かりました。読者の皆様も、多彩な音色のために、張り切って練習してください。
次回は第16番、ちょっぴり不満? 何に不満? です。お楽しみに。
*関連記事:ブルクミュラー『25の練習曲』の弾き方教え方
曲集の魅力を紐解く
第8番《優雅な人》
第9番《狩》
第10番《やさしい花》
第11番《せきれい》
第12番《お別れ》
第13番《なぐさめ》
第14番《スティリエンヌ》

本文で言及されたポスター「ブルクミュラー『25の練習曲』に登場する楽語たち」は『ムジカノーヴァ』2025年10月号の特別付録となっています。


