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“生きる力”を授ける最強の習い事
『ピアノ習ってます』は武器になる!

大内孝夫公開講座レポート

2026年3月24日、神奈川県の海老名市文化会館において、大内孝夫さんの公開講座「“生きる力”を授ける最強の習い事 『ピアノ習ってます』は武器になる!」が開催されました。
今の大人たちとは異なった世界を生きてゆくであろう子どもたち。未来を担う子どもたちに必要な能力や教育とは何でしょうか。新たな時代を生き抜く力と、そのエッセンスが詰まったピアノの学びについて考える講座です。その講義内容をかいつまんでレポートします。 当日はピアノ講師をはじめ、子どもにピアノを習わせる保護者の方々も足を運びました。

文-日水綾香

講義中の大内孝夫さん

現在、小中学生のお子さんを育てる保護者の多くは、子どもを「より偏差値の高い学校に入れること」に意識を向けているのではないでしょうか。そのためには苦手科目を克服し、英数国社理を満遍なくできる力が必要でしょう。
しかしAIが最も得意とするのが、まさにそのような答えのある領域です。決まった正解を導き出す能力が入試に必要でも、人間がAIと勝負してもとてもかなわない能力の開発にばかり集中してしまうことは、お子さんの教育で犯しがちな誤りであると、大内さんは警鐘を鳴らします。
すでにAIによって世界では物事の価値が大きく変わっているのに、教育は驚くほど変わっていないのが現状です。

これから必要になる力は何でしょうか。子どもたちが大人になる10年後、20年後の世界を生き抜く鍵は、AIには代替できない領域にあるのです。生身の人間の五感は、AIには代替できません。音楽をはじめ心を揺さぶるアートの数々、多くの知識や経験を組み合わせて新しいものを生み出す力、食文化や観光などといったソフトパワー(文化や価値観などの魅力)が重視される時代が、すでにやってきています。AIの発達により「労働の価値」が変わり、それぞれの個性や強みや創造性が求められるようになるでしょう。

そこで、「ピアノ習ってます」は武器になる。
これから求められる力のひとつに「『答えのない最高』を目指し、辿り着く能力」を大内さんは挙げています。それはまさに、ピアノの学びを通じて得られるものではないでしょうか。これには会場中が、強くうなずきました。

発表会やコンクールに向けて「答えのない最高」を求めることは、生半可な気持ちではできません。作曲家の意図を汲み取り、「美しい」「悲しい」などを自らの感覚でフルに感じとりながら、細部に気を配り、正確性も高めてゆく練習を重ねるなかで、自らの実力で立ち向かってゆく覚悟を磨いてゆくのです。
そしてひとたび舞台に立てば、ひとりで最後まで弾き切らなくてはいけません。どんな小さな子どもであっても、自身の責任を果たすということを求められます。
本番に向けて逆算して練習をする自己管理能力も必要です。これらはまるで、プロジェクトやプレゼンに取り組むことと同じですよね。
そして、それらは“真摯さ”につながってきます。コロナ禍の頃に、ピアノ指導者たちが教室の垣根を越えて、オンラインレッスンの方法や様々なアイディアを出し合いシェアしたことは、まさにその具体例でしょう。有益な情報を自身で独占せずに、全体をより良くしようと互いに共有することは、簡単なことではありません。

どんなに時代が変わって技術が進歩しても、人間の心のありようや豊かさが失われることはないでしょう。このような力が、社会に出てから役に立つのです。
実は、受験においてもこのような偏差値では測れないスキル・能力が重視される傾向が年々強まっており、AO入試や推薦入試で、“ピアノが使える”学校が増えています。ピアノと受験は相性がとても良いのです。
子どもたちが大人になって社会に出る頃には、「何を学んだか」「どう教育されたか」が今以上に人生を左右すると言えるはずです。

子どもたちが40~50代になったときに感謝される子育て・教育とはどのようなものか、深く考えさせられた2時間でした。ピアノの学びはすべての道へと通ず。ピアノ指導者である筆者も、レッスンに通う子どもたちを、音楽を通して一生ものの「生きる力」を身につけられるよう導きたいと願ってやみません。

講座を終えた大内さん(左)と、テキストの書籍『「ピアノ習ってます」は武器になる』手にする筆者
クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら
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