ブルクミュラークリニック ダイジェスト

ブルクミュラーの大人気ピアノ作品『25の練習曲』を1曲ずつ取り上げ、曲の作り、取り組み方、練習法などをお話ししていく「ブルクミュラークリニック(略してブルクリ)」。月刊誌『ムジカノーヴァ』から引き継いで、この『ムジカノーヴァONLINE』でも続けていきます。今回は第10番《やさしい花》です。

ブルクミュラークリニック院長 奈良井巳城(ならい みき)
文 奈良井巳城
イラスト 駿高泰子
色々な花たちとの対話
奈良井 読者の皆様こんにちは。今日は第10番の「やさしい花」を、柔軟科の柔加先生をお迎えして解説していきます。やわらか先生、お願いします。

総合部柔軟科講師 柔加 多知音 先生(やわらか・たちね)
柔加 あ……おはようございます、せんせぃ。きょうは《やさしい花》について、ふわっとお話しできたらと思います。
奈良井 え~と、では、いつものように、「心得」に沿っていこうかな。「心得」についてはこちらをご覧ください。
楽語についてはムジカノーヴァ2025年10月号の付録ポスター「ブルクミュラー『25の練習曲』に登場する楽語たち」に書きましたので、ここでは割愛します。
柔加 はぃ、この曲は、4分の4拍子で……D-dur。優しい朝の光が頬に触れるような気持ちで始めたいですね。テンポはModeratoで、数字も書いてありますけど、メトロノームには合わせずに、歌って、呼吸がほどけるのを感じられるような速さがちょうど良いんです。急ぐと花びらが散っていってしまいますから……。
奈良井 早々に花びらが散ってしまったら曲にならないからね。タッチには気をつけないといけないね。それで、もう曲想が完全に「やさしい花」になってるけど、柔加先生はこの曲に、タイトルから、どんなイメージを持ってますか?
柔加 はぃ、この曲に出てくるお花たちは、芯の強さがあって、自己主張はそんなになくて、そぉっと、見る人の心を明るくしてくれるの。そして、触れるとかすかに揺れて返事をしてくれるようなお花たち……。クリーム色や、パウダーブルー、モーヴやメドウ、マルーンみたいな色もあって……。
奈良井 うん、あ、わかった。とにかく色々な色合いのお花たちと対話する感じなんだね。ありがと。
柔加 あ、ごめんなさぃね。つい夢中になってしまって……お花のイメージを持って弾くと、音がふわっと息をしはじめるので……。
奈良井 うん、い~ね~。次いこう!
フレージングと指づかい
柔加 この曲はアーティキュレーションスラーがたくさん。このままだと、お花たちが散らばってしまうので、フレージングスラーを自分でそっと描いて、優しく包み込んであげてくださいね。
奈良井 フレーズといえば、おおよそ2~4小節でまとまってるよね。

柔加 2、4、8音のまとまりで何を語るのかが、とても大切なのです。delicatoは「弱い音」ではなくて、「芯があって細くて透明な音」。スタッカートは光の粒が指先でふっとほどけるような感じで……。一つ一つの音型で、花びらを撫でてみたり、風でお花が根元から揺れていたり、ふわっと良い香りがしてきたり、あ、かすかに土の香りもしてきた……。陽の光は暖かくて、時に眩しいこともあって……あぁ、お日様の光って幸せですねぇ……。
奈良井 なかなか詩的な感じで良かったです。で~、指づかいはどうですか?
柔加 あっ……指づかいですか……。私は、やわらかタッチができればどんな指でも良いと思いますけど……お花の動きや風の吹き具合に合わせた指の使い方を、自分の手に合わせて考えるのが良いと思います……。人それぞれ手の大きさ、指の長さが違いますから……。
奈良井 まぁそれはそうね。楽譜に指づかいが印刷されていると強制力があるから、無理して我慢して自分に合っていない指づかいで弾く人も多いもんね。練習曲だから、テクニック的に成長を促すために書いてある指や、音型を最適に表現するための指づかいもあるけど、臨機応変、柔軟に考えていきたいね。やわらかいタッチ作りのためにも。
では、次回は第11番、鳥のお話ですね。新しいタッチ感の登場です!》です。

本文に登場するポスター「ブルクミュラー『25の練習曲』に登場する楽語たち」は


