こどものスケール・アルペジオ
読みもの
 

チェルニー先生ってどんな人?


ONTOMO MOOK ムジカノーヴァ・シリーズの第1弾として『徹底解説 チェルニー30番の弾き方教え方』が発売されました。その内容を一部ご紹介。チェルニー30番の各曲について丁寧に解説する「チェルニークリニック」から、総集編をダイジェストでお届けします。チェルニークリニック院長の奈良井巳城先生と、腕重御脱蔵先生、恩貝くぐる先生のトークです。

チェルニークリニック院長 奈良井巳城(ならい みき)

文 奈良井巳城
イラスト 駿高泰子


奈良井 チェルニー30番全曲の解説と取り組み方を解説するチェルニークリニックは、月刊誌『ムジカノーヴァ』で2022年4月に開院しました。その前に2018 年9月にハノンクリニックを開院しまして、ハノンの教本にはピアノテクニックの何が書いてあるのかを第1~60番で解説したあと……。

腕重御 おいっ! 院長さんよ、これまでの経緯の話はそんなにいらんから、さっさと本題に入ったらどうじゃ?

伝説のテクニカルマスター 腕重御脱蔵先生(うでおもみ だつぞう)

恩貝 まぁまぁ、脱蔵先生。ハノンクリニックもチェルニークリニックも同じことをやってきたぞ!ということが言いたかったんじゃないかな、うん。

滑走部スケール科教授 恩貝くぐる先生(おんかい くぐる)

奈良井 あ! 恩貝先生! そうなんです、ハノン先生もチェルニー先生も、国や時代は違えど、ピアノ演奏に必要なテクニックの考え方は同じなんだな~と。でも前置きが長すぎましたね、ではさっそく、と言いたいところですが、今回は、そもそもチェルニー先生ってどんな人か、生い立ちやお人柄など、脱蔵先生、お話しいただけますか?

10 歳でベートーヴェンに師事

腕重御 仕方ないのぉ~、では、わしがチェルニー先生について少し話してあげようかの。チェルニー先生は1791 年、ウィーン生まれじゃ。ほんとかどうかは知らんが、天才児だったチェルニー先生は3歳でピアノを弾き、7歳で作曲をしたとかでの。あまりに天才じゃから、その当時、音楽家として名高かったベートーヴェン先生のところにお父ちゃんが連れていったのが10 歳の時じゃ。1801 年かの。ベートーヴェン作曲の「悲愴ソナタ」op.13 を本人の前で弾いたとかで気に入られ、見事に弟子入りしたんじゃったな。

奈良井 たしか、ベートーヴェン先生は“天才児”は好きじゃなかったって話がありますよね。

腕重御 そうじゃ、ベートーヴェン先生はもちろん天才であるが、父親からのしごきで指先から血が出るまで練習したというエピソードもあるじゃろう? 強制的な部分もあったと思うが、自身がかなりの努力家だったに違いないから、軽々しく“天才児”というのが嫌だったんじゃろうな。  

恩貝 3年ほど師事していた、という記録が残ってるよね、うん。

腕重御 そうなんじゃ、ベートーヴェン先生はチェルニー先生のことをかなり気に入ったみたいでの、一からみっちりピアノ演奏の基礎を叩き込んだらしいのぉ~。さて、ここで問題じゃ! 下の質問を見てくれ。

Q.ベートーヴェン先生がピアノレッスンで最も強くこだわり、チェルニー先生に教え込んだことはなんじゃったろうか? 次の4つのうちから選んでみよ!

 ①強弱のコントラストをつけることに、たいそう熱心に指導した
 ②和声感を出すことをとても大切にして指導していた
 ③レガート奏法にとてもうるさく指導していた
 ④力強いタッチづくりにこだわり、1音からの音づくりを指導していた

奈良井 これは、選択肢が難しすぎますね。全部大事で、どれも正解にみえる。

恩貝 ん~、ただ、正解は時代的に意外性があるよねぇ~、うん。

奈良井 常に時代の先を見ていたベートーヴェン先生ならではのエピソードですね!

腕重御 では、そろそろ正解を言ってもいいかの? 正解は、③のレガートじゃ!! レッスンでは口うるさく注意されたそうじゃ。レガート奏法は当時の楽器ではとてもできないとされていたのに、ベートーヴェン先生が弾くと、それは見事に美しいレガートだったそうじゃ(チェルニー先生談)。まぁ、何を隠そう、わしのレガート奏法もチェルニー先生に教わったんじゃがな。

奈良井 え……脱蔵先生、チェルニー先生の弟子だったんです、か……??

恩貝 ん~~~~それは……。

奈良井 脱蔵先生、いま何歳です?

腕重御 ん~~? わしの歳? そんなもん、いくつでもよいじゃろが。そんなこと気にしておらんで、チェルニー先生の話に戻るぞぃ。ベートーヴェン先生に弟子入りしたチェルニー先生じゃが、天才的な記憶力の持ち主だったらしく、ピアノのために書かれたベートーヴェン先生の曲は全曲、しかも完全にすみからすみまで暗譜で弾けたらしいのじゃ(チェルニー先生談)。すごいことじゃのぉ~。実際に、ベートーヴェンの後援者の一人だったリヒノフスキー侯爵の前で、侯爵が思いつくままに言う作品を弾いていたらしいぞ。まぁ、そんなこんなでな、ベートーヴェン先生との関係はな、切っても切り離せぬ関係じゃったらしい。

恩貝 ん~、彼らの書簡の内容もなかなかに魅力的なものが多いですよねぇ~、うん。

奈良井 そういえば、先日、チェルニー先生の作曲した《ピアノ・ソナタ 第3番》ヘ短調op.57 に触れる機会がありましてね。ヘ短調op.57 といえば……。

恩貝 「熱情」かな?? うん。

奈良井 はい、そうなんです。ベートーヴェン先生の有名な「熱情ソナタ」がヘ短調op.57 なので、チェルニー先生がリスペクトして揃えたんだなぁ~と、しみじみしちゃいました。意外に良い曲なんですよ。

この記事の続きをはじめ各曲についての詳しい解説は、ムック『徹底解説 チェルニー30番の弾き方教え方』で! ピアニスト阪田知樹さんのインタビューや第26番の書き込み楽譜、伊井光子先生の「練習ポイントとエクササイズ」、佐久間あすか先生の「チェルニー30番をフル活用する」なども掲載されています。

クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら
タイトルとURLをコピーしました