こどものスケール・アルペジオ
読みもの
 

ブルクミュラー『25の練習曲』の弾き方教え方~第9番《狩》

ブルクミュラークリニック ダイジェスト

ブルクミュラーの大人気ピアノ作品『25の練習曲』を1曲ずつ取り上げ、曲の作り、取り組み方、練習法などをお話ししていく「ブルクミュラークリニック(略ブルクリ)」。月刊誌『ムジカノーヴァ』から引き継いで、この『ムジカノーヴァONLINE』でも続けていきます。今回は第9番《狩》です。

ブルクミュラークリニック院長 奈良井巳城(ならい みき)

文 奈良井巳城
イラスト 駿高泰子


狩のイメージをふくらませよう

奈良井 読者の皆様こんにちは。今回は第9番の《狩》を、離鍵科の蓮田益代先生と共に解説していきます。

総合部離鍵科教授 蓮田益代先生(れんだ ますよ)

奈良井 今回も「7つの心得」に沿って話を進めていきます。「心得」は「第8番」を参照してください。

第8番《優雅な人》

さて、お待たせしました、益代先生。本日は第9番の《狩》を深掘りしていきましょう! よろしくお願いいたします。

蓮田 この曲はタイトルの通り、狩猟の活気と迅速さ、そして、間に挟まれた静けさのセクションで陽と陰を合わせ持った作品よね。技術練習としての価値はかなりあるわ!

奈良井 では「心得2」の「拍子、調性、楽語」からいきましょうか。

 6/8拍子  C-dur

蓮田 まず、この6/8拍子のリズムを身体に染み込ませることが大切ね。拍の概念(強拍、弱拍)を理解しないと、狩に行くどころか、単に走るだけになってしまうわ。

奈良井 6/8は複合拍子で、この曲では2拍子で拍子感を作り、1拍の中に3拍子を感じ取っていけると躍動感が出ますね。

蓮田 C-durという潔い力強さも意識して音作りできると良いわね。

奈良井 楽語は『ムジカノーヴァ2025年10月号』の特別付録ポスター「ブルクミュラー『25の練習曲』に登場する楽語たち」も参照してください。

・un poco 少しの(少しだけ~ある)
・vivace  活発な
・agitato  激しくかきたてられて
・dolente  苦痛に

奈良井 それで「心得3」のタイトル「狩」なんですけどね、狩というと、馬とか犬とか森、感情でいえば、興奮とか休息、緊張感とかが連想されるんですけど、そもそも我々、狩なんかしますかね……。

蓮田 しないわよっ笑、ただ、狩をしなくても、西洋文化における「狩」とはどういうことなのかを知っておく必要はあるわよね。狩についてのイメージが理解できれば、曲中のフレーズごとに自分なりのイメージが作りやすいのよ。

奈良井 まぁ、狩というタイトルだからといって必ずしも荒々しく動物を捕獲すると思う必要もないですよね。例えば「清々しい朝に森を駆け抜けるシーン」とか、「若き狩人の勇ましい駆け出し」とか。

蓮田 とにかく、イメージは自分で作るのが良いわね!

奈良井 さて、次は「心得4」のフレージングとデュナーミク。譜面を見ると明らかだけど、この曲はフレージングスラーが書いてないので、自分で書き入れてみよう。また、曲の始まりでは、遠くから馬に乗った狩人が近づいてくるような、強弱を駆使した、見事な遠近法が使われているので、計画性をちゃんと立てていくのが良いね。

蓮田 計画性と言えばフレーズもそうね。どこがピーク(頂点)かを見極めてデュナーミクを決めるのよ。

奈良井 「心得5」はアーティキュレーションだね、冒頭3小節と、5小節目からの記号に注目! これは、古典音楽からの読み取りが必要になるところだ。

【1~5小節目】

蓮田 あれね、モーツァルトのお父さんの教えね。冒頭3小節の記号は、スタッカティッシモ(音をかなり短く鋭くする)としての理解ではなく、弓で弦を弾くように演奏する=弾(はじ)いたようなインパクトのある音にするのよ。

奈良井 それです、それです。通常の打鍵とはタッチ感を相当変えていかないといけないので、色々と工夫してほしいねぇ~。それから蓮田先生、指づかいの話をお願いしますよ。

ブルクミュラーが書いた指づかいは?

蓮田 やっと私の本領発揮ね。読者のみなさん、まず、右手の次の音型で3種類の指づかいを試してほしいの。

    ① 5 1 1 5 1 1
    ② 5 2 1 5 2 1
    ③ 5 1 2 5 1 2

奈良井 むむっ、これはっ! ブルクミュラーが書いたと思われる指づかいはどれかなぁ~。

蓮田 先生は知ってるでしょっ! 読者の皆様、3種類、弾いてみましたか? 実はねぇ、ブルクリでこの3種の指づかいを50人の生徒に弾いてもらって、統計を取ったことがあるのよ。

奈良井 あ、それは、えっと、これだな。ゴソゴソ……はいっ!

次の3種類の指づかいのうち弾きやすかったものを選んでください。
 ①の「5 1 1」 25人
 ②の「5 1 2」 21人
 ③の「5 2 1」 4人

蓮田 よくすぐに出てきたわねっ。この人数だと「①がブルクミュラーかな?」と思うわよね~。それが、実は②がブルクミュラーの書いた指づかいと言われているの。「弾きやすさ」に注目すると上の数字の通りなのかもだけどね。音型のニュアンスを出すには②が良いのよ。②の指づかいでちゃんと弾けるとね、4拍目と1拍目への勢いに動きが出て、2拍子感が程良く出て、なにしろ、馬で走ってる躍動感が表現できるのよ!!

奈良井 いや~ほんとにね、上のGに戻る速さが増すから疾走感が出るんだよね~。この指づかいだと、弾くのは一番難しいけど最高に表情が出るんだよなぁ。

蓮田 さぁ、表情と言えば、勇ましいメロディーに挟まれた2ヵ所のmollね。ここではね、メロディーの作りや伴奏型の違いをよ~く観察するの。その違いに気がつくと、それぞれのフレーズで何を感じれば良いのかが分かってくるわっ! どうしても分からないときは質問していいわよっ。

奈良井 質問はどこにすればいいのかな……? まぁ、いっか。では次回は第10番《やさしい花》です。

 

本文に登場するポスター「ブルクミュラー『25の練習曲』に登場する楽語たち」は

ムジカノーヴァ2025年10月号にて!

クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら
タイトルとURLをコピーしました