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トラブルを未然に防ぐ! 教室規約の重要性


文ー古内奈津子

※本記事は、MOOK『レッスンの言葉がけ&コミュニケーション』に収載している記事を、加筆修正したものです。


私はピアノ指導者向けに規約作成と運用法のセミナーをしているのですが、その中で、「頻繁に振替をする生徒に困っている」「今月はレッスンを半分欠席したから、月謝は半額でいいですよね?と言われて困った」というようなお話を伺うことがあります。あるいは、「学級閉鎖だが本人は元気。レッスンは対面とオンラインどちら?」など、お悩みになった指導者もいらっしゃると思います。
情報過多の時代、価値観も多種多様化し、「これが常識」とはっきり言えるものがなくなった分、悩みも増えましたね。様々な場面に対応できるように、「この教室の約束事はこれです」とあらかじめ定めてあるもの、つまり規約を作ることが大切です。
そこで、セミナーやMOOK『レッスンの言葉がけ&コミュニケーション』では、規約を定めるための考え方や、実際にどう運用していくか (ここが大切!)をご紹介しています。

規約は教室を守るために必要なもの

教室は指導者が決めたコース、時間、月謝など、基本のシステムに則って運営しています。 もしも教室の保護者がみな、すべての事柄に対して指導者と同じ価値観や考え方、感じ方であれば、何も心配はありません。ですが実際はそんなことがあるはずもなく、レッスンの振替に対する考え方一つとっても人によってまちまちです。考え方が違う人同士が自分の意見をぶつけ合ったところで、平行線をたどることは目に見えていますね。そして感情的なわだかまりが生まれ、レッスンに支障をきたします。さらに大きなトラブルに発展した場合は、教室にとって大きなダメージになります。
そうならないために規約が必要です。お互いの意見が食い違った時に「色々な考え方がありますが、当教室はこのように規約を定めていますのでご了承ください」という、話し合いの落としどころになります。

冒頭に書いたような事例がどうして起こるかというと、そこに何の決まりもないからです。いくら指導者なりの基準があったとしても、入会時に口頭で説明してあったとしても、「そんなことは聞いていない」という主張をされてしまったら、何も言い返す言葉はありません。 あらかじめ規約をお渡ししておくことで、そのような事例を抑止する効果があります。

もしも規約がなかったら、保護者は何かあるたびに「この場合は振替をしてもらえるのだろうか」「こんなことをお願いしては失礼だろうか」と悩むことになります。このように悩んだ結果、「ダメ元で」依頼する保護者と、「申し訳ないから」やめておこうという保護者で対応に差が出てしまうことも気になります。いわば、「言ったもの勝ち」の状況は不公平です。保護者同士の話の中で、その対応の違いが発覚した時には教室のピンチとなりますね。

価値観が違う人同士が気持ち良く過ごすための最低限の約束事

お稽古事を自分の都合でお休みしても振替などはなく、レッスン代もお支払いするのが常識という時代はたしかにありました。その世界でのみ通用する昔からの習わしもありますが、それを知っている人ばかりではありません。様々な価値観がある時代ですから、教室として守っていただきたいこと、大切にしたいことは約束事としてきちんと伝えてなければなりません。
だからと言って、あれもこれもと多くを盛り込んだ細かくてうるさくて長い規約は、それだけで保護者の心に高いハードルを築いてしまう可能性があります。想像してみてください。「さあ! 新たな習い事! 楽しみにしているピアノ!」というワクワクした気持ちの時に、「これが教室の規約です」と渡されたものが、長くて細かい規約だったら……ちょっとうんざりしませんか? 面倒になりませんか?
一度そういう気持ちを持たれてしまうと、そのハードルを下げていくのには相当な時間と労力が必要ですから、規約はなるべく短くスッキリとまとめたいですね。
セミナーの時に、すでに規約をお持ちの方にどういう規約を作っているかを伺うことがあります。少ない方でA4用紙1枚~2枚程度。多い方になると8枚、9枚という方もいらっしゃいました。なぜそんなに多くなってしまったのかと伺うと、「想定外の色々なお願いをされたり、びっくりするような行動を目の当たりにしたりして、その都度、それを防止するための規約をつけ足していったら、いつの間にかこれほど多くなってしまった」とおっしゃる方がほとんどです。
このように付け足していく規約は「~をしないでください」「~はおやめください」といった否定的で対決姿勢さえ感じられる文章になってしまいがちです。これではますます保護者の心のハードルは上がるばかり。教室を守りたいという気持ちは分かりますが、そればかりを考えてしまわないように気をつけましょう。
規約は『価値観が違う人同士が気持ち良く過ごすための最低限の約束事』ということを常に念頭に置いておくと、このようなことはなくなります。

保護者と良好な関係を築くための伝え方講座

第1回 保護者との関係づくりに役立つ伝え方
日時:2026年2月27日(金)10:30~12:30

第2回 教室規約の作り方&運用法
日時:2026年3月11日(水)10:30~12:30

会場:大東楽器 ヤマハピアノストアホール
詳細はこちら

教室規約の作り方&運用法
日時:2026年3月12日(木) 10:30~12:30
会場:スター楽器 池上 2Fホール
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