『うたとピアノの絵本』のメロディーはそのままに、華やかな伴奏が付いた『連弾・うたとピアノの絵本』。本書について、著者の呉暁先生に解説していただきました。
※この記事は、『ムジカノーヴァ』2000年8月号の再掲です。
文―呉暁
こんなに広がる連弾の効用
編曲の工夫
『うたとピアノの絵本』は、1989年に出版されて以来、多くの方々に愛されてきました。そのCDは、2年前に発売されましたが大変評判が良く、子どもたちがこれを聴いて歌を覚えてきてくれるので、ピアノの先生方も「教えるのが楽になった」といって喜んでくださいました。
そこで、連弾楽譜へのご要望にもお応えしたいと、CDを担当した佐藤誠一さんに編曲を依頼したところ、「どういうものにするか、よく検討したい」ということで、しばらく、時間を掛けることになりました。
編曲について佐藤さんが考えたのは、次のようなことでした。
1.単なる和声付けではなく、もっと楽しいアイデアを盛り込みたい。
2.レッスンで先生が弾くだけではなく、ご家庭でも、お父さんやお母さん、少し大きいお兄さんやお姉さんと一緒に弾くことができるように、伴奏部分をできるだけ弾きやすいものにしたい。
発表会で弾いても良いような楽しい音楽で、それでいて難しくないなんて、無理な注文ではないかと心配しましたが、今年に入ってから次々に送られてきた曲はシンプルで、生き生きしたリズムや素敵な和音が使われていて、とても楽しいものでした。
CDのイメージを生かして
CDを聴いて育ってきたお子さんたちは、音楽をすっかり覚えてしまうほど、毎日歌っているので、連弾のために新しい音楽を作るよりも、CDのイメージを生かしたほうが良いのではないか……ということになりました。
佐藤さんは、CD制作のときに、歌詞の内容と旋律の動き、尾崎さんの絵のイメージ……をよく検討し、自分も楽しみながら、どうやって具体的にそれ音にしていくかを考えた……と言っています。でき上がったCDは、私の『うたとピアノの絵本』を基に、多彩な音を使って、あたたかくユーモアあふれる、新たな佐藤さんの世界を作っていると、私は感じました。
それは、尾崎真吾さんが、私の作った歌詞と旋律を基に、ユニークな発想を付け加えて、素晴らしい絵本の世界を展開してくださったことに似ています。
このCDを聴いて、子どもたちがうれしがって歌うばかりではなく、大人も「心が和む」と言って喜んでくださいました。
連弾楽譜は、豊富な楽器の音色をつかったCDの音楽をピアノに置き換えたり、前奏と後奏を2小節程度に短くしたりして、作られています。
「ぶーぶー、ぶたさん」のように、ピアノでもブーという鳴き声が聞こえてくるような音がして、とても面白いものがあります。
曲の中には、アイデアの面白さや、思わずニッコリしたくなるようなユーモアが盛り込まれているものがあるので、楽しんで弾いてみてください。
たのしいあそび
子ども用の楽譜は、見やすいように『うたとピアノの絵本』と同じサイズにして、前奏、間奏、後奏……の間の休符を書かないことにしました。
そのために、一緒に弾く前に、前奏を1回聴かせてあげたり、間奏について説明してあげたりしなければなりませんが、それが、生徒とのコミュニケーション作りに役立つ……という良い面も見られました。また、子どもたちは思ったよりもずっと勘がよく、譜を見て数えながら入るよりも、前奏を聴いて「ここかな?」と、多少緊張しながら弾き始めるタイミングをとらえるのを楽しんでいるように見られます。
これが、ひとりで弾くだけでは経験できないアンサンブルの面白さなのかもしれません。
この1月から、できたものを次々に生徒たちと弾いてみましたが、「もっと弾きたい、もっと……」という子どもたちの反応に、「こんなに、楽しいものか」と私も驚いてしまいました。 それで、サブタイトルの「たのしいあそび」を思い付いたのですが、連弾楽譜ができて、本当に良かったと思います。
幼児指導の充実
このたび、連弾楽譜が出版されたことによって、『うたとピアノの絵本』を中心とする幼児指導が、より充実したものになりました。
1. CDを聴いて、歌を覚えて、音程よく歌うようになる(2~3歳)。
2.『うたとピアノの絵本』で、歌ったり、弾いたりする(4~5歳)。
3.『うたとピアノの絵本』を始める前に、または、同時に『4才のリズムとソルフェージュ』に入って、良いリズム感と音感を付ける。その後、『5才のリズムとソルフェージュ』で、リズム感と音感を育てながら譜読みを確かにしていく。
4.『連弾・うたとピアノの絵本』で、アンサンブルを経験したり、伴奏の和声をきいたり、音楽的な基礎を自然に身に付けていく。
このような指導をすれば、子どもたちは、楽しくてほんとうに音楽が好きになり、また、ソルフェージュの基礎をしっかり身に付けることができます。
なお、連弾楽譜は、『うたとピアノの絵本』が進んでいくと同時に使っても良く、3冊とも弾けるようになってから復習のようにして始めても良いのです。
生徒が集まる先生
音大を卒業して5年……というKさんは、「先生! わたし生徒が26人に増えちゃったんですよ!」と、うれしそうに報告してくれました。
たしか、1年前の今頃は「生徒が20人」と言っていたのですが、広告を出したりしないのに、評判を聞いて増えていく……というのです。
Kさんは、『うたとピアノの絵本』を歌ったり、内容について生徒と話をしたり、一緒になって絵を描いたりするのだそうです。一方、『4才のリズムとソルフェージュ』をていねいに教えているというのです。
教えるのが楽しくて仕方ない……といわぬばかりの、彼女のキャラクターも魅力ですが、楽しいだけではなく、譜読みの基礎を根気良く教えてくれる……という点で、お母さん方の信頼を得ているようです。
このように、ただ楽しいだけのレッスンではなく、多少面倒でもソルフェージュを重視した指導法が評価される……というのは、大変うれしいことです。生徒を楽しませながら基礎力を付ける……というのは、根気と努力のいる大変な仕事ですが、『連弾・うたとピアノの絵本』は、その両面で、お役に立つものとなるでしょう。大いに活用してください。
関連記事:
呉暁先生が解説する教本シリーズの使い方
呉暁先生の『うたとピアノの絵本』指導法①
呉暁先生の『うたとピアノの絵本』指導法②
呉暁先生の『うたとピアノの絵本』指導法③


